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なにがなんでもカバチ


「きわめて信頼できる筋によると、ソーチャクはおまえをいつも〝あの醜い顔の鬼ばばあ?と呼んでいたらしいぞ。これでその苦悩も少しは薄れるか?」
 チャバトはたったいま公衆の面前で冷酷にはずかしめられたことに気づいて、屈辱に満ちた表情で、アガチャクからあとずさった。そして怒りにふるえながらくるりとふりかえり、死者のなにも感じないわき腹を蹴飛ばした。「醜い顔の鬼ばばあだって?」チャバトは金切り声をあげて、また体を蹴った。「醜い顔の鬼ばばあだ? たわけたことを、ソーチャク! おまえの臭い死体なんか蛆虫どもにたかられりゃいいのさ!」そう言うと、チャバトは身をひるがえしてすすり泣きながら逃げるように部屋を出ていった。


「いささか錯乱しているようだな」ウルギットがおだやかに言った。
 アガチャクは肩をすくめた。「幻想が砕かれるのは、いつもつらいものですよ」
 ウルギットはうわの空でとがった鼻をひっぱった。「だが、彼女の精神的混乱は、ここでは多少危険を招くことになるぞ、アガチャク」かれは考え込むように言った。「この奴隷商人の使命はわれわれ双方にとってきわめて重大なものだ。ヒステリックな女は――とりわけ、チャバトのような力のある女は――非常に危険な存在になりかねない。彼女はあきらかにここにいるウッサに敵意をいだいている。かれがチャバトのこうむった侮辱とソーチャクの死の両方にからんでいるとあれば、神殿はかれにとって世界一安全な場所とは言えんだろう」
 アガチャクは重々しくうなずいた。「陛下のご指摘どおりです」
 名案が浮かんだようにウルギットの顔が明るくなった。「アガチャク、かれが無事に出発できるまで、ウッサとかれの従者たちをわたしがドロジム宮殿にかくまうというのはいかがなものだろう? そうすれば、逆上したチャバトがむこうみずな行動に走っても、ウッサの身は安全だ」ウルギットは気がかりそうに言葉をきってから、いそいでつけくわえた。「すべて、あなたしだいだが、アガチャクどの」
「一理も二理もある提案ですな、ウルギット王」アガチャクは答えた。「ここでちょっとした過失を犯せば、あなたはカル?ザカーズのいいなりになり、わたしはウルヴォンかザンドラマスの前に服従するはめになりかねない。こうした災難はなんとしても避けたいものです」かれはサディのほうを向いた。「おまえと従者たちは陛下についてドロジム宮殿へ行くがよい、ウッサ。おまえの手回り品はあとで送らせる。宮殿にいれば安全だ。数日のうちに船の用意も整う」アガチャクは皮肉めかしてほほえんだ。「われわれの心づかいをありがたく思えよ」
 サディは頭をさげた。「感謝の言葉もないくらいでございます、聖なる高僧さま」
「しかし、ダガシ族のカバチはこの神殿においておきましょう」アガチャクは王に言った。「そのほうがわれわれも、ラク?ハッガへ向かう一行にまぎれこむ重要人物を掌中ににぎることになります。協力するためにはそのほうが心強い」
「もちろんだ」ウルギットはせきこんで同意した。「よくわかっている」かれは立ち上がった。「もう時間も遅い。わたしは宮殿へ帰るとしよう。あんたにはやらねばならない宗教的義務がたくさんあるだろう、恐れおおい高僧どの」
「ご母堂のレディ?タマジンによろしくお伝えください」アガチャクは答えた。
「伝えるよ、アガチャク。あんたが憶えていてくれたと知ったら、母はさぞ喜ぶだろう。ではまいろうか、ウッサ」ウルギットは回れ右をして、ドアのほうへ歩きだした。
「トラクの魂があなたとともにありますように、陛下」アガチャクがうしろから呼びかけた。
「それは遠慮したいな」ウルギットはサディにつぶやき、かれらはドアをくぐりぬけた。
「陛下はいいときにおいでくださいましたよ」サディが廊下を歩きながら、静かに言った。「いささか緊迫した状況になっていたんです」
「世辞はよしてくれ」ウルギットはにがにがしげだった。「をラク?ハッガへ送り込む必要性がなかったら、グロリムどもと敵対するような危険をわたしが犯すものか。おまえはいいやつらしいが、自分の命のことも考えなくてはならんからな」
 飾りびょうを打ちつけた神殿の扉の外へ出ると、マーゴの王は背伸びをして、冷たい夜気を深々と吸い込んだ。「あの臭い場所から出てくると、いつもほっとする」かれは部下の護衛のひとりに身振りで命じた。「馬たちを連れてまいれ」
「ただいま、陛下」
 次にウルギットはつるつる頭のニーサ人をふりかえった。「もういいぞ、このずるがしこいキツネめ」かれはおもしろがっているような口調で言った。「さあ、このクトル?マーゴスでなにをしているのか教えろ――その変装の理由もな。得体の知れないスシス?トールのウッサとやらが、サルミスラ女王の宮殿にいた宦官長のなつかしい友だちサディにほかならないと気づいたとき、わがはいはもうちょっとで気絶するところだったぞ」

ちょっと見るだけなら


「気をつけるがいいぞ、ソーチャク」高僧は不吉に言った。「わたしの決定にあまり激しく楯つくと、わたしがこの出来事はすべてはおまえのせいだと考えるかもしれん。チャバトは責め殺す者がいなくなって、失望のあまり病気になる」アガチャクは狡猾な目つきで尼僧を一瞥した。「ソーチャクを殺したらどうだ、おい? わたしはいつも、おまえにささやかな贈物をするのを喜びとしてきた。おまえがソーチャクのはらわたを赤く焼けた鉤針でゆっくりひきずりだす眺めは、さぞ楽しかろう」
 炎のもようのついたチャバトの顔は、くやしさでいっぱいだった。ガリオンはチャバトが高僧をみくびっていたことに気づいた。過去何回もそうしてきたように、今度もアガチャクがおとなしく自分の横柄な要求を受け入れるものとチャバトは確信していたのだ。そして彼女はひと目見るなり嫌悪をおぼえたサディを罰することに、威信のすべてを賭けていた。彼女とソーチャクが用意した嫌疑が、アガチャクによって、おもいがけなくも、そしてほとんど軽蔑するように、拒絶されたことで、彼女の慢心したうぬぼれは根底からゆさぶられていた。だが、それよりもっと重大なのは、神殿における権力の地位までがぐらついてきたことだった。この状況からなにかを――なんでもいいから――救い出すことができなければ、チャバトは日頃から彼女をにがにがしく思っている大勢の敵にひきずりおろされてしまうだろう。みずからの優位を知っていたとき以上に、いまのチャバトは危険だった。ガリオンはサディがそのことに気づくように祈らずにいられなかった。
 高僧の気分を推し量ろうとしながら、チャバトは警戒ぎみに目を細めていたが、やがて肩をそびやかしてウルギット王に話しかけた。「ここには国家的犯罪もございます、陛下」彼女は言った。「わたくしは聖所の冒涜のほうがより深刻かと思っておりましたが、尊敬する高僧さまがその英知において、そちらの嫌疑は根拠のないものであることを発見なさいましたので、国をおびやかす犯罪についてご忠告申しあげるのが、いまのわたくしの義務でございます」
 ウルギットはアガチャクとすばやく視線をかわすと、悲しげな目をして、さらに椅子に沈みこんだ。「聖職者の言葉はつねに聞く用意があるぞ」かれはさほど気のりしないようすで答えた。
 チャバトはふたたび勝ち誇った表情になり、おおっぴらな憎悪をうかべてサディを見やった。「わたくしたちの国家創設のころより、蛇の民のいやらしい薬や毒薬はクトル?マーゴスでは国の法令により禁じられてまいりました。このウッサと従者たちが独房に監禁されましたあと、かれらの身の回り品を調べさせたのです」チャバトはくるりと向きをかえて、「あの箱を持ってくるように」と命令した。
 わきのドアが開き、ぺこぺこした下級僧がサディの赤い革の箱を持ってはいってきた。狂信者のソーチャクが、やはり勝ち誇った笑いをうかべて、箱をうけとった。「スシス?トールのウッサがわれわれの法を破り、よって、命を剥奪される証拠をごらんください」ソーチャクは甲高い声で言うと、掛け金をはずして箱をあけ、サディのさまざまなガラス瓶と、ジスが住んでいる土焼きの瓶を見せた。
 ウルギットがますますみじめな顔つきになった。かれは不安そうにサディを見ると、期待をこめてたずねた。「こういうものを持っていることについての説明はあるんだろうね?」
 サディはおおげさに無邪気な表情をつくった。「陛下、まさかわたしがここクトル?マーゴスにこれらのものを広めようとしていたとお考えなのではないでしょうね」かれは抗議口調で言った。
「しかしだな」ウルギットはあいまいに言った。「おまえはそういうものを所持しているではないか」
「それはもちろんでございますが、マロリー人向けの商品としてでございます。あの連中のあいだでは、このような品は高く売れるのです」
「それはそうだろうな」ウルギットは椅子のなかで背筋をのばした。「すると、わが国民に薬を売るつもりはなかったと?」
「めっそうもないことでございますよ、陛下」サディは怒ったように答えた。
 ウルギットはほっとした顔になった。「やれやれだ」かれはサディをにらみつけているチャバトに言った。「そういうわけだ。ここにいるニーサの友人がマロリー人を骨ぬきにしようとしている事実については、われわれのだれひとり異議を唱えることはできんはずだ――口だししなければ、それだけ好都合だ」
「これはどうなのです?」ソーチャクがサディの箱を床におろして、土焼きの瓶をもちあげた。「ここにはどんな秘密が隠してあるんだ、スシス?トールのウッサ?」かれは瓶をゆすった。
「気をつけてくださいよ!」サディは叫ぶなり、片手を伸ばして瓶にとびつこうとした。
「ははあ!」チャバトが勝ち誇った声で叫んだ。「その瓶の中には、奴隷商人の大事ななにかがはいっているらしいね。中身を調べさせてもらうよ。まだ発見されていない犯罪がここにひそんでいるやもしれない。瓶をあけよ、ソーチャク」
「お願いです」サディは懇願した。「命を大切になさるなら、その瓶に手を出さないでください」
「いいからあけよ、ソーチャク」チャバトは無情に命令した。
 グロリムはほくそえみながらふたたび瓶をゆすると、コル物業二按ク栓をはずしはじめた。
「後生です、お坊さま!」サディは声をふるわせた。
「見るだけだ」ソーチャクはにやにや笑った。「害はあるまい」かれはコルク栓をぬいて、瓶をもちあげ、片目をあてて中をのぞきこんだ。
 ジスがとっさに攻撃したのは、言うまでもない。
 首をしめられたような悲鳴をあげて、ソーチャクは両腕をふりまわしながら、うしろ向きにのけぞった。そのはずみに土焼きの瓶がソーチャクの手からとびだし、床に落下する寸前にサディが受け止めた。襲われた僧侶は恐怖に顔をゆがめて、両手で目をおおった。と、指のあいだ公屋貸款から血が噴き出した。ソーチャクは手足をけいれんさせて豚のような金切り声をあげはじめた。いきなり前のめりに倒れ、狂ったように顔をたたいて皮膚をかきむしった。次に頭を床に打ちつけはじめた。けいれんはますます激しくなり、口から泡をふきはじめた。甲高い絶叫とともに、かれは突然宙高くとびあがった。落下したとき、ソーチャクは絶命していた。
 肝をつぶしたような静寂が一瞬あたりを支配し、やがてチャバトが黄色い声をはりあげた。「ソーチャク!」その声は苦悩とかけがえのないものを失った不安に満ち雀巢奶粉ていた。彼女は死んだ男のかたわらに駆け寄ると、身をなげかけて身も世もないようにすすり泣いた。
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