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ナムジャイブログ

あなた

あなたのお母さん




「ああ、だったら焚き火の前に戻るよ。生きてたときの姿を覚えておきたいんだ」
 スパーホークが乗りこんで従士の遺体のそばに腰をおろすと、馬車はぎしぎしときしんだ。騎士はしばらく何も言わなかった。嘆きはもはや底をつき、今では痛烈な悔恨の念だけがあった。
「二人してずいぶん長く旅してきたものだな」やっとそんな言葉が口を衝《つ》いた。「おまえは家に戻って休息し、おれは独りで旅を続けていかなくちゃならない」闇の中で小さく微笑む。「おまえにしては軽率じゃないか、クリク。いっしょに年を取っていこうと思ってたのに――これからもずっと」
 騎士はしばらく黙りこんで、また口を開いた。
「息子たちのことは心配するな。立派な息子たちだ。タレンのことだって、いずれは誇りに思えるようになる。尊敬されるってことを教えこむのに、しばらくかかるかもしれないがね」
 またしばらく口を閉ざす。
あなたのお母さん

「アスレイドにはできるだけ穏やかに伝えるよ」スパーホークはクリクの手に自分の手を重ねた。「さらばだ、わが友」
 一同がもっとも恐れていた、アスレイドに悲報を伝えるという場面は、結局のところ訪れなかった。知らせはもう伝わっていたのだ。アスレイドは夫とともに長年働いてきた農場の門の前で、黒い喪服に身を包んで待っていた。若木のように背丈の伸びた四人の息子たちもいちばんいい服を着て並んでいた。その悲しげな顔を見て、スパーホークは入念に準備してきた演説が不要になったことを悟った。
「お父さんに会ってきなさい」アスレイドが息子たちに言った。
 四人はうなずき、黒い馬車に向かった。
「どうしてわかったんだ」アスレイドと抱擁をかわしたあと、スパーホークが尋ねた。
「あの小さな女の子よ。前にカレロスへ行くとき、いっしょに連れていたでしょ。ある晩、あの子がドアの外にやってきて話してくれたの。そのままいなくなってしまったけど」
「その話を信じたのか」
 アスレイドはうなずいた。
「本当のことだと思ったわ。あの子は普通の子供とは違ってた」
「まったくだ。残念だよ、アスレイド。残念きわまる。クリクが年を取ってきたとき、家に帰すべきだった」
「いいえ、スパーホーク。そんなことをしたら、あの人はがっくりきてたでしょう。ところで、あなたにお願いがあるんだけど」
「どんなことでも言ってくれ」
「タレンと話をしたいの」
 どういうことかわからないまま、スパーホークは若い盗賊にこっちへ来いと合図した。
「タレン」アスレイドが口を開く。
「何だい」
「あなたのことはとても誇りに思ってるわ」
「おいらを?」
「あなたはお父さんの敵《かたき》を討った。兄さんたちもわたしも、とても嬉《うれ》しく思っているよ」
 タレンはアスレイドを見つめた。
「知ってたの? つまり、クリクとおいらの関係だけど」
「もちろんですとも。ずっと前から知ってたわ。これから言うとおりにしてちょうだい。しなかったら、スパーホークに鞭《むち》でぶたれますからね。いいこと、シミュラへ行って、を連れていらっしゃい」
「何だって?」
「聞こえたでしょう。お母さんとは何度か会ったことがあるの。あなたが生まれたすぐあと、どんな人なのかシミュラまで見にいったのよ。どっちがうちの人にふさわしい女か、決着をつけようと思ってね。とてもいい子だった――ちょっと細すぎるけど、ここへ来ればすぐにちゃんと太れるわ。わたしたち、とても気が合うの。あなたと兄さんたちが見習い騎士になるまで、みんなでいっしょにここで暮らすことにするわ。そのあとはあの人と二人で切り盛りしていけるし」
「おいらに農場で暮らせっていうの」タレンは信じられないと言いたげに尋ねた。
「お父さんならそう望んだはずだし、あなたのお母さんもそれがいいと思うでしょう。わたしだって、もちろんそう。まさか三人をそろって失望させるような真似はしないわよね」
「でも――」
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